【曲名】"Tell It The Way It Is!"/「テル・イット・ザ・ウェイ・イット・イズ!」【1963年】
【アーティスト】Paul Gonsalves/ポール・ゴンザルヴェス
【収録アルバム】"Tell It The Way It Is!"/「テル・イット・ザ・ウェイ・イット・イズ!」【1963年】
ジャズ解説本などでは、1950年代のジャズと言えばモダン・ジャズ一色であったかのように語られるのが通常です。モダン・ジャズ系作品は刺激的で興味深い作品が大量にあるのは事実ですので、それ自体は全く問題ありません。
ですが、当時アメリカのショービジネスの中心は依然としてビッグ・バンド系スウイング・ジャズが中心だったそうです。しかも、白人のバンド・リーダーものやペギー・リーですとかシナトラのような白人ヴォーカリストのレコードが飛ぶように売れていたというのが現実。モダン・ジャズは1,000枚プレスされた程度で、それすら売り切るのが困難だったそうです。信じられないような話ですが。
チャーリー・パーカーやマイルス、コルトレーンのようなモダン・ジャズ系ビッグネームと比較すると、アーリー・ジャズ期から活躍していたジャズ界の大御所であるデューク・エリントンやカウント・ベイシーのようなスウィング・ジャズ系の重鎮が1950年代以降に録音した作品は、しばしば時代遅れですとか過去の遺物的な扱いを受けます。
たしかにモダン・ジャズこそが至上のジャズと考えるモダン・ジャズ中心史観からすると、1950年代のエリントン=過去の遺物という図式は正解。ですが、ジャズの素晴らしさといいますか、面白さの神髄は振幅の大きさである点はどうしても見逃せません。どの時代もいろいろなスタイルのジャズが併存していたからこそ、ジャズのディスコグラフィは驚くほど豊かになっています。
ポール・ゴンザルヴェスは1920年生まれですので、チャーリー・パーカーと同じ年。ですが、パーカーがモダン・ジャズの創始者のひとりとなったのとは対照的に、ゴンザルヴェスは旧来ながらのビッグ・バンド畑を歩み、その名を知られるようになったのは1950年代にデューク・エリントン・オーケストラのソリストとして。ですので、モダン・ジャズ中心史観からははずされがちなサックス奏者です。
1950年代のエリントンのライヴではゴンザルヴェスの5分を超える長尺ソロがひとつの呼び物となっていました。肉体労働派サックス奏者でした。
ゴンザルヴェスはしばしばエリントン楽団の同僚たちとスモール・グループでのリーダー作を録音しました。"Tell It The Way It Is!"【1963年】もそのうちの一枚。ややこしいモダン・ジャズ理論など無用の痛快作です。
Wikipedia:Paul Gonsalves/ポール・ゴンザルヴェス
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