【曲名】"Love Is War"/「恋は戦争」【2008年】
【アーティスト】Hatsune Miku/初音ミク
【収録アルバム】 「supercell」など
Refer to Wikipedia in English:Vocaloid or Hatsune Miku
私はもうおっさんですので、アイドルですとか、いわゆる”萌え系”といった文化とは無縁でしたし、これからも関係ないものと思っていました。そもそも若い頃も「アイドルなんて興味ねえ」という感じで、外国の古い音楽ばっかりの音楽生活でした。
アニメーションに関しては、ジブリ作品は大好きでしたが、大友克洋の「AKIRA」は肌が合わず、押井守の「攻殻機動隊」は面白いと思えた、程度の認識。子供の頃もマンガをあまりしっかりと呼んだことはないような者です。
youtubeを当てもなく彷徨っていると、ときどき”初音ミク”という単語が出てくることには気づいておりますた。それがアニメのキャラクターなのか何なのかすら良くわからない程度。が、数ヶ月前なんとなくリンクをクリックして見ました。面白いと感じました。
で、色々調べたところ、”初音ミク”という存在がもの凄く現代的で画期的なものであることがわかってきます。以下に記す私の認識がどこまで正確かどうかいまひとつ自信はないのですが、初めて知った時の私同様に、”初音ミク”が一体全体何なのか解らずに戸惑っている方のために、いくつかの基礎的な情報を列挙してみます。もし認識違いがありましたらお知らせ下さい。
【1】2007年8月クリプトン・フューチャー・メディア社から、歌詞とメロディを入力すると女性の音声で歌ってくれるPCソフト「初音ミク」が発売される。
【2】このソフトでアマチュアが製作した楽曲がニコニコ動画で公開され人気化する。
【3】人気化した曲に、CGアニメを提供しPV風の動画が作成されるようになる。このPV作成には”振り付け師”というダンスを考える人もいるとのこと。
【4】3Dホログラムを用いたライブが開催されるまでになる。
この【1】【2】楽曲、【3】PV、【4】ライブは3つ異なるメディアと分けて考えた方が良さそうな印象。そして、この”初音ミク”というムーヴメントは、曲を作る人、PVを作る人/振り付けを考える人、3Dを使ってライブを行う人、それを楽しむ人(リスナー)、すべてが参加者ということになるようです。
私が特に面白いと思ったのは、これらの過程に関わった方がほとんどアマチュア(一部はプロ?)らしいという点。ひと昔前なら、曲を発表し人気化させるには、どうしても音楽プロダクション/レコード会社を通さなければならなかったはずです。この”初音ミク”に関し興味深いのは、そのハードルを取っ払ってしまった点、つまり音楽の製作・発表権をレコード会社から制作者本人に戻してしまった点です。
50年前なら、レコード会社などは音楽発展の上で必要不可欠な存在だったはず。音楽レーベルが才能を発掘し、製作環境を与え発表する舞台を整えてこそ、アーティストは世に出ることが可能でした。良い意味で、レコード会社がアーティストとリスナーを仲介していたと考えられます。ところが、インターネットが全世界に普及し尽くしている現状では、この音楽産業各社を飛び越して制作者がリスナーに直接楽曲を提供し、リスナーも自由にそれらの中から自分の嗜好に合った作品を選ぶことが可能ということに。
アマチュア音楽家がレコード会社などに縛られずに曲を発表できる点、リスナーも自分の好きな曲を選べる点、この2つの点で初音ミクの登場は画期的なんじゃないかと思われます。
近年、レコード会社/音楽産業の衰退は目に余るものがあります。私はCDを購入するにしてもほぼ古いものしか買いません。逆に言えば、新しいものに欲しいものがほとんどありません。新しい音楽には魅力をほとんど感じません。その上、日本の音楽産業は”妙なもの”ばかりをゴリ押しする始末。そういった不満を感じてた人々に”初音ミク”は訴えるものがあったのではないかと。もしリスナーが満足できる楽曲を音楽産業が提供し続けていたなら、”初音ミク”が人気化することはなかったのかもしれません。
音楽作成ソフト「初音ミク」発売から3年とちょっとが経過し、これまで発表された曲は3万曲を越えるそうです。その中から人気化したのはもちろんわずか。これはリスナーが厳しい目で選択した結果な訳です。もの凄い競争が行われた結果ということに。この厳しい競争は楽曲だけではありません。1つの曲に対し、複数のPVが製作されることもあるそうです。これもまたリスナーが鑑賞し、より支持されたPVが生き残ることに。
先ほど、リスナーも”初音ミク”ムーヴメントの参加者と書きました。リスナーはこれまでの産業音楽市場では単なる「受け手」でしたが、「初音ミク」に関しては積極的に発言し、支持/不支持を表明する「受け手」以上の存在となったと考えても良さそうです。流行を作るのは、レコード会社のプロデューサーではなく、多数存在するリスナーによる自由意志ということに。
更に、リスナーは「歌ってみた」ですとか「踊ってみた」というように、初音ミクの曲を歌ったり踊ったりして、その音声、映像をアップすることも出来ます。音楽をただ受け取るだけではなく、発信も出来る訳です。著作権管理の厳しい商業音楽では、なかなかこの楽しみ方は成り立ちません。
繰り返しになりますが、①曲を作る人、②PVを作る人(振り付けを考える人)、③ライブを企画製作する人、④これらを鑑賞し、判定する多数のリスナー、⑤歌ってみた、踊ってみたでオマージュを捧げる人、これら全てが「初音ミク」の参加者ということになります。こんな音楽の楽しみ方って今までありませんでした。素晴らしいと思います。遅ればせながら、私も「聴く」だけですが参戦させて頂いております。
いくつか出来の良い作品を見つけたのですが、最初に紹介するのは映像的にも楽曲的にも面白いと思えた「恋は戦争」という曲を。作った方の詳細は私には良くわからないのですが、興味のある方は初音ミクwikiというサイトの「恋は戦争」という項を参照してみてください。
上記【4】3Dホログラムを使ったライブ映像がこちら。
で、ですね、Youtube上では、なぜか日本人ではなく、外国人のコメントばかり。どうやら外国でもこの初音ミクは大人気のようです。
ちなみにこちらはスペイン語バージョン。スペイン人が現地語/実写でリメイクしちゃったようです。
ウィキペディア:初音ミクの項/初音ミクWiki
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